B型肝炎ワクチンの予防接種
目次
1.B型肝炎ワクチンとは
種類 | 不活化ワクチン | 区分 | 任意接種 |
---|---|---|---|
接種可能時期 | 生後2ヶ月~(1ヶ月より可能) | 接種回数 | 3回 |
B型肝炎ワクチンで予防できる病気は?
B型肝炎ウイルスが体の中に入ってもその場では何も無いことが多いですが、特に赤ちゃんの場合では症状が出ないまま肝臓の中にウイルスが定着してしまう(これをB型肝炎ウイルス無症候性キャリアと呼びます)ことが多く、このB型肝炎ウイルスキャリアのうち10~15%程度は将来的にB型肝炎を発症してしまうとされています。
また、このB型肝炎ウイルス無症候性キャリアの方は、一定の条件がそろうと回りの人にB型肝炎をうつす、感染源ともなってしまいます。
B型肝炎になると慢性肝炎や肝臓がん、肝硬変などに進行していくことも多く、急性肝炎・劇症肝炎に一気に進行すると死亡する危険性もあります。
B型肝炎ウイルスの感染力は強いため、昔は赤ちゃんのB型肝炎では「赤ちゃんが産道を通って産まれてくるときにお母さんから感染する」ということが多くありました。
B型肝炎は血液感染といって、B型肝炎ウイルスを含んだ血液や体液(この場合はお母さんの血液)が赤ちゃんの体の中に入ってしまうことで感染するのですが、
産道を通るときの出血や傷から赤ちゃんに感染する可能性があるということですね。
このような形でのお母さんからの感染を垂直感染と言いますが、現在では
- お母さんがB型肝炎の抗原を持っていないか妊娠中に検査する
- お母さんがB型肝炎ウイルスの抗原を持っていたときの対処方が確立している
などの理由から、垂直感染でのB型肝炎の発症はかなり減ってきています。
ちなみに、垂直感染が疑われる場合には出生後すぐに予防措置としてB型肝炎ワクチンとHBs免疫グロブリン(B型肝炎に対する免疫をたくさん含んだタンパク質)を投与します。
この垂直感染が分かった場合の治療は公費医療となりますのでお金はかかりません。
他の感染経路としては、兄弟やお父さん友達などの唾液や体液・血液などからの水平感染、性交渉での成人の水平感染などがあります。
2.B型肝炎ワクチンのスケジュールと受け方
B型肝炎ワクチンはいつから接種できるの?
生後1ヶ月から接種が可能ですが、普通はこれらと同時接種することが多いですね。
B型肝炎は任意摂取ですので事前予約が必要となります。
かかりつけの小児科に電話をして、予約をとりましょう。
開始年齢 | 接種回数 | 接種予定 |
---|---|---|
生後2ヶ月~ | 3回 | 2回目:1回目から4週~あけて 3回目:2回目から20~24週あけて |
B型肝炎の免疫力は、予防接種から時間がたつとうすれて無くなっていってしまうので、この3回の予防接種が終わってからも、入学の時や就職の時に毎回チェックしていくことになります。
生後1ヶ月を超えていたら、B型肝炎ワクチンは何歳までしか受けれないという時期はありませんので、もし免疫が薄れていたら追加で接種を受けることになります。
生後3歳未満でB型肝炎に感染すると慢性化したりB型肝炎ウイルスのキャリアになりやすいですので、3歳までは半年~1年ごとに免疫がきちんとあるか定期的にチェックをします。
その後はワクチンの効果はおよそ10~20年と言われていますので、小学校~中学校ぐらいで検査をして、免疫力が下がっていたら追加接種を受けることが多いようです。
B型肝炎ワクチンはどこで受ける?費用は?
電話をして、予防接種の予約をとりましょう。
費用は1回当たり6,000円~8,000円ぐらいのところが多いようです。
B型肝炎ワクチンのおすすめの受け方は?
なお、生後2ヶ月から受けられるワクチンには
- B型肝炎ウイルスワクチン
- ヒブワクチン
- 小児用肺炎球菌ワクチン
- ロタウイルスワクチン
の4つがあります。
かかりつけ医でこれら4つの全てを受けることができるかどうか確認しておきましょう。
B型肝炎ウイルスとロタウイルスのワクチンは任意接種ですので、事前に予約が必要になる場合があります。
同時接種でない場合、予防接種から一定の期間をあけなければ次の予防接種を受けることができません。
特にロタウイルスのワクチンは生ワクチンですので、前の接種から1ヶ月(28日)を空けないと次の予防接種を受けることができません。
4つ同時に受けられる病院が近くになければ仕方がありませんが、できるだけ早いタイミングで予防接種を受けていきましょう。
生後2ヶ月から予防接種を受け始めた時の、B型肝炎ワクチンおよび同時接種するワクチンのスケジュールを載せておきます。
生後2ヶ月 | B型肝炎ウイルスワクチン1回目(任意) ヒブワクチン1回目(定期) 小児用肺炎球菌1回目(定期) ロタウイルスワクチン1回目(任意) (全て同時接種を推奨) |
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生後3ヶ月 | B型肝炎ウイルスワクチン2回目(任意) ヒブワクチン2回目(定期) 小児用肺炎球菌2回目(定期) ロタウイルスワクチン2回目(任意) 四種混合ワクチン1回目(定期) (全て同時接種を推奨) |
生後5~6ヶ月 | B型肝炎ウイルスワクチン3回目(任意) |
3.B型肝炎ワクチンの副作用は?
B型肝炎ワクチンには大きな副作用はあまりありません。
副作用としては、
- 接種した部位の赤みや痛み
- 軽い発熱
- めまい
- 筋肉痛・関節痛
などがありますが、どれも軽度で数日中には消失するものです。
4.B型肝炎ワクチンのコラム
お母さんがB型肝炎のキャリアの場合の授乳について
次に心配になるのは・・・お母さんの母乳からB型肝炎がうつらないの?ということでしょう。
基本的には母乳からB型肝炎がうつることはありませんので、母乳を上げても大丈夫です。
ただし、乳首が傷ついていたりケガをして出血している場合は、赤ちゃんがお母さんの血液を飲んでしまう可能性があるのでミルクを与えるようにしましょう。
血液を直接飲んでしまうと、赤ちゃんが自分の免疫で防げる以上の量のB型肝炎ウイルスが体に入ってしまうことがあります。
最近のB型肝炎について
ジェノタイプAのB型肝炎ウイルスは、昔から日本で多かった「ジェノタイプC」のB型肝炎ウイルスより感染した時にキャリア化しやすく、危険性の高いウイルスです。
ジェノタイプAのB型肝炎ウイルスは昔ははヨーロッパやアメリカに多く分布していたのですが、日本人が海外に旅行する機会が増えたために日本にも入ってきてしまったと考えられています。
ユニバーサルワクチネーション(UV)
一方、世界の国々の80%以上が、生まれてきた子ども全員にB型肝炎ワクチン3回接種を行っているのです。
(生まれてきた子ども全員にワクチンを接種することをユニバーサルワクチネーション(UV)と言います。)
この認識の違いをどう思いますか?
現在日本では年間20,000人が新しくB型肝炎にかかっています。
知名度が低いからといって放置できるような数字ではありません。
定期接種だから・・・強制じゃないから・・・と言って後回しにはせず、生後2ヶ月になったらすぐに予防接種を受けるようにしましょう。